2月1日に開催されたDMM GAMESとXFLAGのゲーム開発者向けの共同イベント「ゲームプロデューサーが描く、これから。」のレポートの後編をお届けします。
登壇し、対談を行ったのは、DMM GAMESのエグゼクティブプロデューサーである花澤雄太さんと、株式会社ミクシィ取締役でXFLAG スタジオでモンスト事業本部 本部長を務める多留幸祐さん。
異なる会社で、異なる流れでゲームやエンターテインメントに携わるお2人が考える「プロデューサー」とは?
時には共通して意気投合し、時には異なる意見を述べ合うなかで、今後のゲーム業界やモノづくりのビジョンが見えてくる、とても興味深いセッションとなっていました。
レポート後編では、DMM GAMESとXFLAGのプロデューサーが見すえる「これからのプロデューサー像」や海外事情などについてレポートしていきます。
●登壇者:花澤雄太さん(株式会社DMM.comラボ)のプロフィール
DMM GAMES花澤部部長であり、エグゼクティブプロデューサー。
代表作「刀剣乱舞 -ONLINE-」を筆頭に、「Lord of Walkure」「FLOWER KNIGHT GIRL」の立上げ等、プラットフォーム初期を支えた第一人者。
現在も注目タイトルを数々手がけるDMMきってのエバンジェリスト。
●登壇者:多留幸祐さん(株式会社ミクシィ)のプロフィール
携帯コンテンツ会社、株式会社ライブドア(現LINE株式会社)等を経て、2014年2月、株式会社ミクシィに入社。
モンストスタジオ(現XFLAG スタジオ)でモンスターストライクの企画・運用に従事。
2015年1月、同スタジオの部長に就任。
2017年4月より、XFLAG スタジオ モンスト事業本部長として、モンスターストライクに関わる全部門を統括。
2017年6月、取締役に就任。
ゲームプロデューサーではなく、エンターテインメントプロデューサーの時代へ
DMM GAMESの花澤さんは『刀剣乱舞 -ONLINE-』を例にして、「ゲーム以外への展開」に関してコメント。
特に熱く語っていたのは、俳優さんがゲームキャラを演じる「2.5次元の舞台」についてでした。
それまでミュージカルや舞台にあまり興味がなかった花澤さんですが、実際に舞台を見た際の出演者や観客の熱意とクオリティに、作品の広がりを感じたそうです。
そしてそれは、もはやプロデューサーにとってゲームだけのことを考えるだけではなく、もっと大きな「エンターテインメント作品としてのプロデュース」に重要性を感じるきっかけにもなったそうです。
そもそもはコンシューマゲームの開発者だった花澤さんですが、ここ数年のスマホゲームは新しいことばかり。マルチプレイの流行や3D演出の進化、月額課金からアイテム課金への環境の変化を含めて、とにかく状況が動いています。
そんななかで「ゲームだけのこと」を考えることは「新しい楽しさ」を阻害してしまう危険性もあり、これからのプロデューサーはエンターテインメントという大きな枠での広がりも考えることが大事だと、花澤さんは力説していました。
新しい人が考えた武器をつぶさずに、協力できるのがこれからのプロデューサーとして大事なこと。新しい仕掛けに敏感になるようにアンテナをはりつつ、きちんと対応して、世界を広げていくことが重要な時代になってきているようです。
海外市場はどう考える? ローカライズとカルチャライズへのスタンス
海外市場については、DMM GAMESは日本と文化が似ているアジア圏での展開を強めていると語られました。
その際、海外のメーカーと協業をすることも増えているそうですが、花澤さんによると、昔と比べてイラストやグラフィック部分での文化差はシームレスになっている印象を受けるとのこと。
イベント後半の質疑応答でも海外との文化差の話題が出ましたが、例えば、日本と中国とで色の塗りなどに違いはあるものの、中国のイラストレーターが日本に少し寄せた塗りにするだけで日本ユーザーに受け入れられるし、その逆もまたしかりとのこと。
ゲームシステムの機能面についても、「この機能は日本向けではないからオミットする」など、地域の文化に応じた微調整で対応できるレベルだとコメントしていました。
花澤さんいわく、「世界を見て、広く大きく作っておいて、地域に応じて調整を行う開発スタイル」が多いとのことでしたが、それに対して多留さんは別の意見を提示。
中国と日本では文化的な違いが大きいという事例として、『モンスト』が一度中国市場に参入して撤退したのち、あらためて中国市場に再参入することになった背景について語られました。
1つは、日本と中国のゲームの遊び方の違いについて。日本は長く遊び続けてもらう中長期の運営型のゲームが多いのに対して、中国では短期間で集客をして一気に収益を得る短期ビジネスとしての側面が強いと感じているそうです。
もう1つは、中国での展開において、『モンスト』の強みである「顔合わせマルチ」がうまく文化とマッチしなかったこと。
これらの問題について、以前は他社との協業でもあったこともあり、文化差をすりあわせるためのカルチャライズを行うかどうかのせめぎ合いとなり、うまいバランスに調整しきれなかった反省があるそうです。
これらの反省点をもとに、あらためて中国市場に再参入する際には自社でしっかりと時間をかけて展開を行っているとのこと。
前回のネックだった「顔合わせマルチ」も、むしろ「何年かかるかわからないが、いま無い文化なら自分達が新しい文化を創る」くらいの意気込みで挑んでいるそうです。
多留さんいわく、「地域や文化に応じたローカライズはするけれども、カルチャライズまでしてしまうと、そのゲームが持っているおもしろさがブレてしまう」とのことで、再参入の際には覚悟を決めたそうです。
前述したように、いくつもある「正解」の中から、自分たちの武器である「顔合わせマルチ」を信じて押し出すという「戦略」が選ばれたわけですね。
そんななか、お2人が口をそろえて強調していたのは、中国のプレイヤー人口の多さとポテンシャルについて。
花澤さんは中国ではDAU(Daily Active Users:1日のアクティブユーザー)が1億を超える事例も見たことがあり、それだけの人数をさばくためのサーバー技術1つとっても大変なことだと語っていました。
これからのプロデューサーはどうなる?
ゲームのプロデューサーを目指す人へのアドバイスを求められた花澤さんは、自分の場合は「適材適所を考えること」とズバリ回答。
スタッフがより力を発揮できる環境を作ったり、開発会社が得意とする分野でのゲーム開発を進めたりと、自分以外のメンバーの適材適所を考えてマネジメントするという、花澤さん流の答えを示しました。
ただ、そのマネジメントで難しいのは、「本人のやる気は大事だけど、やりたいこととやれることが必ずしも一致しないこと」。
花澤さん自身も、そもそもは自分でゲーム開発をやりたいタイプでしたが、ポジションが変わることによって考え方を変えないといけない部分も多々あり、結果的には「プロデューサーとしてやること」にコミットしていったそうです。
この「ゲーム開発者」と「プロデューサー」というポジションによって考え方や視野を変えることが必要な部分については、多留さんも同意。
「ゲームプロデューサーと、わざわざゲームとつけて限定するような時代ではなく、これからのプロデューサーにはもっと大きなビジョンを描く必要があります」と強調。
さらに多留さんは、プロデューサーの仕事=コンセプトを決められる人と定義。細かい作業は他の人にまかせてもよいが、そのプロジェクトのキモとなる部分を人に委ねず、ちゃんと「決める」人がいないと、プロジェクトが崩壊しがちとのこと。
くわえて、そうやって決めたコンセプトに対してコミットするために動くことも、プロデューサーの重要な任務だと力説していました。
プロジェクトを大きくするために必要な行動をしっかりと行い、どんな手段を使ってでも魅力を伝えていくというマインドを持った者でないと、プロデューサーとして成功することは難しいようです。
特にXFLAGでは、プロデューサーとして企画を動かす際には、自分自身でコアメンバーを集める流れが一般的とのこと。最終的には大人数の開発チームにならざるをえないからこそ、その中心となるメンバーとはしっかりマインド共有をできないと、先ほどの「顔合わせマルチ前提と言っているのに、それを崩すアイデアが出てくる」など、「無駄な議論の繰り返し」になりがちになるそうです。
野球に例えるとプロデューサーは監督
そんなプロデューサー論が続く中で、多留さんが出したわかりやすい例が、プロデューサー=野球の監督というもの。
自分自身で打席やピッチに立つわけではありませんが、チームメンバーを集めて、作戦を決めて、指示を出すことで、チームを優勝へと導く「監督」というポジションは、たしかにプロデューサーと通ずるものがありますね。
加えて、優勝をすればチーム全員の年棒が上がるからこそ、個々のチームメンバーのがんばりも大事だとコメント。
花澤さんもそれに同意して、ゲーム開発を含めたプロジェクトの現場では、どうしてもみんなが「4番バッター」や「エース」になりたがりますが、チーム全体を見すえて「ちゃんとバントを決める」ようなチームプレイも必要だと、まとめていました。
でも、ちょっと寂しそうに花澤さんは「でも、勝利の喜びをより実感できるのって、監督じゃなくてエースや4番バッターなんですよね」とポツリ。
プロデューサーにはプロデューサーとしての喜びがあることは明言しつつも、プロデューサーは複数プロジェクトを同時に受け持つことも多いので、トラブル中のタイトルへの対応へ意識が向いてしまうため成功タイトルを喜ぶタイミングが難しいと「プロデューサーあるある」的なコメントをしていました。
そして最後に花澤さんは、プロデューサーの資質の1つとして「心が強いこと」「切り替えができること」が大事だと締めくくっていました。
プロデューサーは、喜ぶタイミングが難しいわりには負けた時の責任は重く、特に生々しい損失金額が見えた時の衝撃は、リアルにひざをつくレベルとのことです……。
ただ、その失敗を成長の糧として次に生かすという姿勢が大事で、そこで落ち込んでも仕方がないと、プロデューサーとしての姿勢についてアドバイスをしていました。
「遊び」としてのガチャの楽しさ
質疑応答では、会場の参加者からお2人に対して、アプリゲームで主流となっている「ガチャ」についての所感を求める場面もありました。
これについて多留さんは、自分が子どものころにガチャガチャで遊んだ時には、確率どうこうを気にせずに、何が出るのか友だちと一緒にワクワクしながら楽しんでいたという思い出を語っていました。
しかし、使う金額に違いがあったり、ユーザーの熱量が高くなりすぎてしまうこともあるので、安心してガチャを楽しんでもらうためにどういう情報を提供していけばよいかは常に考えていかないといけない、とのこと。
ただ、多留さんのスタンスとして、ガチャはそれ自体が「遊び」であり、楽しくてワクワクするもの。
昨年11月に行われた「モンスト×養老乃瀧グループコラボ」のように、店舗でガチャを引くと料理(!)や限定コラボグッズが当たるという「遊び」も非常に楽しいものでした。
花澤さんも、「ガチャ自体がゲームの1つ」というスタンスを示しつつ、数年前と比べてガチャとゲームバランスの変化が起こってきていることへの指摘がありました。
以前はガチャキャラをそろえないとメインストーリーで先に進めないようなバランス調整もありましたが、最近は低レアキャラでもちゃんとゲームを楽しめるようなバランス調整が多く、ガチャキャラ必須の時代ではなくなってきたことに言及。
収益手段についても、ガチャ以外のアプローチも増えてきており、「遊びの1つ」という考え方を示していました。
ゲーム業界を目指す人へのリクルートページもチェック
DMM GAMES、XFLAGともに、現在採用を強化中です。
ゲーム業界を目指している方はもちろん、花澤さんや多留さんの熱い思いに打たれた方は、リクルートページをチェックしてみてはいかがでしょうか?
・DMM GAMESリクルートページ
・XFLAGリクルートページ
▼【DMM GAMES×XFLAG】「ゲームプロデューサーが描く、これから。」概要
■開催日:2018年2月1日(木)19:00
■場所:東京都港区六本木3丁目2番1号住友不動産六本木グランドタワー 24階 DMMグループセミナールーム
■登壇者:花澤 雄太氏(株式会社DMM.comラボ)/多留 幸祐氏(株式会社ミクシィ XFLAG スタジオ)
・販売元: XFLAG, Inc. ・掲載時のDL価格: 無料 ・カテゴリ: ゲーム ・容量: 117.3 MB ・バージョン: 10.3.1 |